住所・氏名変更登記義務化に関する3つの通達

 住所変更登記の義務化に関して、法務省から発出された3つの通達(令和7年~8年)の内容を整理して説明します。

1. 事前準備と情報連携に関する通達(令和7年3月3日 法務省民二第373号) 通達1
 登記官が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)等の情報を利用して、職権で住所等変更登記を行うためのシステム的な仕組み作りについて定められています。

  • 検索用情報管理ファイルの整備: 所有権の登記名義人(自然人)の氏名、住所、生年月日、メールアドレスなどを記録するファイルを整備し、住基ネット情報と照合して変更の有無を確認できるようにします。

 

2. 義務化の具体的内容や罰則、免除事由に関する通達(令和7年10月30日 法務省民二第915号 通達2
  制度の核心である「申請義務」と「過料(罰則)」、そして過料の対象外となる「正当な理由」の運用基準が示されています。

  • 過料の手続き(事前の催告)
     申請義務に違反したと認められる場合でも、登記官はいきなり裁判所に過料の通知をするわけではありません。まずは対象者に相当の期間を定めて申請すべき旨を催告(申請の催告)し、その期間内に申請がされなかった場合に限り、裁判所への通知(過料通知)が行われます。
  • 「正当な理由」の具体例
     義務を怠っても過料が科されない「正当な理由」として、以下のようなケースが明記されています。
    • 重病その他これに準ずる事情がある場合
    • DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者等で、生命や心身に危害が及ぶおそれがあり、避難を余儀なくされている場合
    • 経済的に困窮しており、登記の申請にかかる費用を負担する能力がない場合

 


3. 職権による登記等の実務手続きに関する通達(令和8年3月27日 法務省民二第525号) 通達3
 施行日(令和8年4月1日)の直前に出された通達で、登記官が自ら(職権で)行う登記の具体的な手順が定められています。

  • 個人の場合(意思確認の手続き)
     登記官が住基ネットの情報から名義人の住所変更等を把握した場合、対象者に対して「意思確認通知」を送付します。送付から1か月以内に本人から申出(了解)があったときに、職権で変更登記が行われます。
  • 法人の場合
     会社法人等番号に基づき、法人の登記簿から異動情報を取得した場合は、個人のような意思確認手続きを経ずに、職権で住所等変更登記が行われます。
  • 死亡・失踪時の「符号」の表示
     名義人が死亡または失踪宣告を受けたことを関係行政機関等からの情報により把握した場合、その名義人が権利能力を有しないこととなった旨を示す「符号」を、職権で登記記録に表示する仕組みも規定されています。


 この3つの通達により、社会問題となっている所有者不明土地の発生を防ぐ目的を達成しつつも、職権登記による国民の負担軽減や、DV被害者・困窮者への配慮、過料前の事前の催告など、慎重に制度を運用するための詳細なルールが敷かれていることがわかります。

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